【ハイキュー!!】夢の続き ~another story~
第4章 episode III :孤爪 研磨はいつも傍観。
笛が試合の終わりを告げる。
長い長い笛の音の中、おれたちは呆然とにこやかに頭を下げている少女を見ていた。
笛の音が切れ、葵が頭を上げる。
「あっ!けんま!!クロ!!」
手をぶんぶん振りながら駆け寄ってくる。そして、コケッ、とまたつまずいた。
おれたちはクスリと笑って、葵におめでとうと声をかけた。
「えへへ〜、ありが–––」
「うぉぉぉぉおお!葵!!!!よく頑張ったなぁ!!」
彼女が言い終わるより先に飛び込んできたのは、彼女の父親。
頭と顎を手で挟んでグリグリしながら、頬ずりする、この父親。
葵の目が死んでいる。
「ちょっとお父さん、話の途中なんだけどっ!」
「だっで、俺ぁ嬉じぐで!」
「とりあえず涙と鼻水どうにかしてちょうだい」
そんな親子の会話を見て、おれたちはまた笑った。
彼女の母親も呆れた様子、だけど口元は笑っていて穏やかだった。
今までは、人に見られるのがイヤで、人目を避けてきた。
自分を守るために、人を観察して、厄介なことを避けてきた。
けど、葵はすごく面白くて–––
『クロ、葵おもしろいね』
「!」
おれは葵といるのが改めて、楽しいと思った。