【ハイキュー!!】夢の続き ~another story~
第5章 episode Ⅳ :Mothers Lullaby
葵からメールが届いた。
中身は、今日から高校に通う、との内容だった。
希望とやる気に満ちた、文章だった。
ひとつ、残念なのは
私とお父さんへ、と表記してあるのに
私にしかメールを宛てていないことだった。
今夜も夫はまた枕を濡らすのだろう。
あの子が宮城へ行ってから、もう毎日のように泣いているのだ。
そこへお酒が入っているのだから、尚面倒くさい。
ほんと、勘弁してほしい……。
葵が、この家から離れて、もう5日経った。
彼女がいなくなったこの家は、なにか物足りない感じだった。
『大丈夫かしら、あの子……』
「大丈夫だろ。俺たちの子だぞ。強く生きてるに決まってる」
珍しく夫がまともなことを言った。
私は、『そうね』と返し、夫が注いでくれた酒をちびりと呑んだ。
沈黙。
ただ、お互い酒気を漂わせるだけの、リビング。
私は、なんとなく、アルバムを引っ張ってきて、机の上にそれを広げた。
小さな葵、まだ産まれたばかり。
ちょっと顔はしわしわ。
1歳の葵、柔らかいボールで遊んでる。
2歳の葵、転んで目元に涙を浮かべてる。
「–––––なあ、憶えてるか?あの時のこと」
夫がおもむろに口を開く。
"あの時"
『あたりまえじゃない。忘れること、ないわ』