【ハイキュー!!】夢の続き ~another story~
第3章 episode II :黒尾 鉄郎の楽しみ
しかし、そんなことも気にならないくらいその子はバレーが上手かった。
楽しい時間は瞬く間に過ぎていき、そして–––
「いた!おいっ葵!!」
ビクリと肩を震わせた隣の彼女は「うげ」と言った。
"葵"っていう名前だったのか……。
今さらながら、まだ自己紹介すらしていないことに気づく。
そうこうしているうちに、葵の名前を呼んだ人物が階段を駆け下りてくる。
「葵、こんなところまで来ていたのかっ!
これで27回目だぞっ!!!」
「えへへ〜」
父親だろうか、叱責する男性に隣の彼女はとぼけるように笑う。
その男性がこちらを見た。
「すまんな、遊んでくれてたみたいだな……。ありがとう」
『いえ、楽しかった、です』
「おとーさん、2人ともすっごく上手なんだよ!」
「そうか!よかったな遊んでくれて。2人にお礼言っておきなさい」
「あそんでくれて、ありがとう!」
屈託ない笑顔で礼を述べられ、研磨と2人会釈程度しか返せなかった。
「じゃあ、バイバイ」
手を振る少女の顔が一瞬、寂しそうに見えた。
『……なあ!!』
階段を上って、彼らは俺たちより上の位置にいる。
葵は目を丸めて、こちらを見た。
『名前!なんていうの!!?』
「葵! 津田 葵だよ!!
あなたは?!」
『おれは黒尾 鉄郎!!こっちは孤爪 研磨!!
また遊ぼーぜ!葵!!』
「うん!ありがとー!!またねー!!」
今度こそ手を振って別れる。
だけど、彼女の表情はすごく嬉しそうで––––
俺も心がウキウキしていた。