第1章 ばすけっと [ブラコン:昴]
「…あ、あの…そのボール…」
『!、あ…すみません。これ貴方のでしたか?転がっていたので…つい、すみません』
顔をあげた女の子は少し小柄で可愛らしい顔立ちをしていた。
「っ////あ…いや、別に…」
『ボール返しますね。はい』
両手を伸ばして昴の方へボールを渡す。
「あ、ぁあ…悪い」
『では、練習頑張ってください。失礼します ニコッ』
「、あ!おい……」
『?、どうかしましたか?』
聞きたいことはたくさんあった。
なぜドリブルをしていたのか
バスケが好きなのか
それとも単なる好奇心からきた行動だったのか…
だがどれも引き留めてまで聞くには値しないような気がしてどもってしまう。
いまだにこちらを不思議そうな顔をしながら見つめる彼女は、特に急いでいる様子ではなかった。
「いや、…その…何でドリブルしてたんだ?」
『ぁあ…別に意味はありませんよ。ホントにボールが転がっていたので…すみません』
眉の下がった笑顔を見て不覚にも昴の心臓は大きく脈を打ってしまった。
ドクン ドクン
「ぁ…いや、その…///」
昴はまだ彼女と話をしていたいそういう感情が芽生えていた。
『…、でもバスケって難しいですね。何回チャレンジしても3回以上できなくて…』
「っ、教えてやるよ。ドリブル。簡単だから…」
気づいたら昴はやや早口ぎみにそう告げていた。
『、え?』
「っ/////いや、お前が嫌だったらいいんだ…だから…えっと、」
―やらかした―
もう昴の頭の中は大混乱だった。
『いえ、嫌だなんて…むしろ嬉しいです。でも練習の邪魔ではないですか?』
「別に…丁度休憩しようと思ってたから」
ぶっきらぼうに呟いた言葉には嬉しさが垣間見れた。
『では…お願いします。ニコッ あ、私といいます』
「っ、朝日奈昴」
の笑顔を見て昴は名前を言うことしかできなかった。