第1章 *
囁くように言われたその言葉を理解するより早く、気付かぬうちに肌蹴られていた衿からぐっと長谷部の手が侵入する。普段手袋で覆われているその手のひらは固く燃えるように熱くて、すぐさま胸へと辿り着いてはその指を沈ませる。やわやわと揉まれるように弄ばれる自分の乳房にも、意地悪く笑いながらも恍惚とする長谷部にも、先程告げられた悪魔のような囁きにも、全てに理解が追い付かず、ただただ好いた相手に初めて触れられたという事実に頭が沸騰しそうな程熱くなった。
時折その先端に遊ぶように指が掠める度、喉の奥から堪えきれない吐息が漏れる。抵抗しなければいけないのに、やめさせなければいけないのに、いつの間にか辺りを包んでいた甘ったるい空気に呑まれてしまったのかさほど抵抗らしいものはできなかった。くにくにと先端を指の腹で押し潰されると、自分のものではないような声が漏れる。それに嬉しそうに顔を綻ばせる長谷部を見て、もうどうにでもなれと思いくったりと体の力を抜いた。
「ああ、主…。お慕いしております…。」
私の体から力が抜けた事が分かったらしい長谷部は、うっとりと呟いてその先端にしゃぶりつく。熱い口内に含まれ、舌で扱かれ、犬歯で少しばかり甘噛みされてしまえばもう言葉らしい言葉は発せなかった。はふはふと吐息も荒く肩で息をしながら漏れる声を抑えようと唇を噛み締めれば、咎めるように長谷部のそれで塞がれる。
「んん、ぅ、っは、はせ、べ…!」
「…はぁ、あるじ…。」
息継ぎの仕方も分からず、されるがままに口内を蹂躙される。歯列をなぞられ、上顎を擽られ、奥に縮こまった舌ですらも絡められて吸われる。あまりの気持ち良さにくらくらしながら、生理的な涙を零せば勿体ないとばかりにそれすらも長谷部に吸い取られた。
ちらりと下を見れば、長谷部に散々弄られた胸の先端はてらてらと光り充血している。まるでその様がもっと触ってくれと期待しているみたいでとてつもなく恥ずかしくなり、ぎゅっと目を瞑った。