第1章 *
「長谷部っ、ほんとにやめて!私、まだ長谷部と一緒に居たいっ!」
「主、誤解してらっしゃるようなのでハッキリ言いますが、そんな話はデタラメですよ。」
「はせっ……え?」
今度、ぽかんと間抜けに固まるのは私の方だった。その言葉に必死で抵抗していたことも忘れ、長谷部を凝視する。長谷部は嬉しそうにしながらも、うっとりと私の頬を撫でながら甘い声で囁く。
「確かに俺達は付喪神であり神の端くれですが、だからといってそういった行為を穢れだとは言いません。」
「…え? え…だって、」
「どこからそのようなデタラメな話が持ち上がったのかは知りませんが、神と結ばれてもそれは穢れではありませんよ。寧ろ、子を生すその行為は神聖な儀式ではないでしょうか。」
「そもそも穢れだなんだと言っていたら、この世に生き物など生まれることはないでしょう」
と事もなげに言われてしまうと、あ、たしかに、と納得してしまう。しかし火のないところに煙は立たない、とも言うのだ。どちらが真実か今は判断ができない。神様自身である長谷部が言うのだからそうなのかもしれないが、それよりも私は一緒に居られなくなる方が怖かった。だから、せめてと妥協案を出す。
「わ、わかった。デタラメかどうか調べるから、それがハッキリするまでこういうことはやめよう?」
そう言えば、往生際が悪いとでも言いたげに長谷部がむっとした。長谷部自身はすっかりその気のようで、むっとしている間もその手は私の頬や肩を厭らしく撫でまわしている。甘い甘いその感触に絆されそうになるが、必死に抑えて言ったのにあろうことか長谷部は猛った自身を私の太腿に押し付けるようにして見せつけた。
羞恥やら何やらで真っ赤になり何も言えずにいる私に、続ける。
「主、もう我慢できません。今までさんざん我慢したのです。ここでまたお預けはないでしょう。」
「なっ、は、はせべ!や、やめっ…!」
「ああ、付喪神自身に言われてもまだ不安ですか? それなら…、」
「試してみましょうか。」