第2章 繊月 -今に繋がる過去-
駅前を過ぎると、すぐに窓の外の風景が緑に変わる。
といっても、この時間ではただの黒なんだけれど。
黒の中に、ところどころ光があって、そこで人々が生活していることを主張する。
田舎だなぁ。
見慣れた黒の景色をぼんやりと見る。そこにはガラスに反射した自分の顔があった。
そう言えば、さっきの人に「疲れているみたいだし」って言われたっけ。
私そこまでクマ酷いのかな。
それとも、表情ににじみ出るくらいの顔してたのかな。
そっと自分の頬に手を当てる。
「……疲れた……」
そう小さく呟いた次の瞬間に意識は暗闇に落ちていて「お客さん、着いたよ」とドライバーに声を掛けられるまで深く眠ってしまっていた。
.