• テキストサイズ

【HQ】No Border

第4章 上限の月-夜に沈む-





返す言葉を探しているうちに、月島くんの足がピタリと止まってそして私の方に体を向き直した。

自然と見つめ合うような空気が流れて、月島くんの口がわずかに開いた時、



ヒュウウウウゥッ



と、夏の夕暮れに強い風が舞い込んだ。


「ぅぷっ……!」


思わず拭いた風に、周りの土や葉が舞いあがる。
顔に掛った髪を直していると、ふっと視界が陰った。

いつの間にか直ぐ目の前に月島くんがいて、
そしてその右手をすっと差し出すと、そのまま私の頭にふわりと触れた。


「……な、に……?」


その動作がスローモーションのように見えて、鼓動が速くなる。


「……ゴミ、ついてたから」


私の髪を撫でるように、大きな手がさらりと動いていく。


「あ、ありがとう……」


私がそう言うと、彼はくるりと背中を向けた。
そして「僕、こっちなんで」と、目の前の曲がり角を早足に曲がってしまう。


あっという間に姿が見えなくなって、私は一人呆然と立ち尽くすだけだった。



彼の手が触れた頭の先から、全身に痺れるような熱が走る。

あんなにも年下の男の子の手付きにこんな感情を覚えるなんて……不覚……!



私は速まる鼓動を誤魔化すように、足早に約束のお店へと向かったのだった。



.
/ 54ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp