第4章 上限の月-夜に沈む-
10分ほど歩いて嶋田マートに着くと、ちょうど表に嶋田くんが出ていた。
「嶋田さん!今日もお願いします!」
「お、忠、来たのか。って、あれ、香奈?」
後ろから歩いて来た私に気付くと、嶋田くんはひょいと首を傾げた。
私は月島くんにありがとうと御礼を言って荷物を受け取ると、それを嶋田くんに渡した。
「これ、お父さんがおじさんに借りてた本。返すように頼まれてさ…」
「お、わざわざ悪い。渡しとくよ」
「お願い。あ、中に御礼入ってるってお母さんが言ってた」
「マジか、気遣わなくていいのに。って、あれ、今日この後飲み会だよな?」
「そ。嶋田くんは後から来るの?」
「おー、どうせ遅くまで飲んでるんだろ?この後は忠の練習もあるし、気が向いたらそのうち行くわ」
「解った。じゃ先に行ってるね」
そう言うと、嶋田くんは急ぎ足で自宅の方へと戻り、山口くんは「じゃあ、また明日ね、ツッキー!」と言って裏庭の方へと消えて行った。
「……」
月島くんと二人この場に残された私はどうにも居心地が悪くなり、ぐるっと勢いよく大げさに体を方向転換させる。
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