第4章 上限の月-夜に沈む-
振り返ると、そこには烏野バレー部の山口くんと月島くんが立っていた。
…月島くんが視界に映った瞬間、少しだけ自分の息を飲む音が聞こえた気がした。
「お久しぶりです!」
山口くんは屈託のない明るい声でそういうと、少し駆けるようにして私の側まで来てくれた。
月島くんはその後ろで歩くペースを乱すことなく、首を少しだけ下げて軽い会釈をしてくれた。
「2人とも、久しぶり。今日も部活だったの?」
「はい、今終わったとこで。香奈さんはこれからお出掛けなんですか?」
「うん。飲み会なんだけど、その前に嶋田マート行くの……って、えっ!?」
ふいに、月島くんが私の肩に掛っていた荷物をひょいと取り上げた。
「……おばあさんみたいに腰曲がってマスよ」
「わぁ!ツッキー優しい!」
「山口うるさい」
あ、あぁ、荷物を持ってくれたのか。
そんな重い物を軽々と……
「あ、ごっ、ごめん、ありがとう。でも、それ嶋田マートまで届けなくちゃいけなくて……」
「俺たちちょうどこれから嶋田さんのところに行くんです!」
「行くのは山口だけでしょ。僕は通るだけだから」
「え、そうなのツッキー?」
私の返事を聞くことなく、二人は歩き出す。
「あ、あの、それ重いでしょ?肩悪くしちゃいけないし大丈夫だよ?」
「え?ツッキー、そんなに重いの?俺も持とうか?」
「全然重くないケド」
そう言いながらどんどんと足を進めてしまう。
私はその行為に甘えることにして、二人の後を追いかけた。
「嶋田くんのとこって、買い物に行くの?」
「いえ、俺がサーブの練習付き合って貰ってるんで……」
「あ、裏の空き地のとこか。そっか、ならほどね、あそこで練習してるのか。山口くん、いいサーブ打つもんね」
「え!?そそそ、そんなことっ…!が、頑張ります……っ!」
ぶんぶんと手を顔の前で振ると、山口くんは照れてしまったのか、それ以上多くを喋らなくなってしまった。
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