第4章 上限の月-夜に沈む-
実家のベッドでぼんやりと寝ころぶ。
見慣れた天井は、実家の生温さを象徴してくれている。
冷房器具を一切使わない部屋はじんわりと汗が滲む程度に暑い。
だらしなく体を投げ出している私は、フェイスタオルを首に巻いて、手に持った内輪をパタパタとさせながら、本棚に飾ってある一つのフォトフレームに視線を移した。
高校時代のバレー部皆で取った写真。
三年生の最後の大会の後、泣きながら笑って撮った集合写真。
皆笑顔だけど、目の周りは真っ赤。
悔しくて悔しくて、それでも、私たちはやりきったよという満足感に満たされた、あの時。
「……青春、だねぇ……」
少しだけ頰を緩ませてそんなことを呟いた時、不意に携帯電話が震えだした。
見ると、繋心からのメッセージに一枚の写真が添付されている。
『東京合宿大成功ー!!』
の、ひとことと、暑苦しい炎のイラストスタンプだ。
送られてきた写真には、烏野の生徒だけではなくて、合同合宿をしていた学校の生徒と思われる子たちも沢山写っている。
正直、誰が誰だか認識するのも難しいくらいに小さくて、それでも、金髪の繋心だけは直ぐに解った。
「繋心、顔変わんないねぇ……」
先ほどまで見ていた写真と比べると髪型しか変わっていなくて、私は思わず笑っていた。
そして視線は、不思議と彼を探していた。
「あ、いた。……やっぱり、背高いよなぁ……」
端の方に立っている月島くんを見つけた。
眼鏡の向こうの顔は…たぶん、無表情。
合宿に参加したということは、やっぱり部活に対してやる気がないわけじゃないんだろう。
高校男子の運動部合宿なんて、そこそこキツイと思うんだけどな……
それでもバレーを続けている意思があるのに、何が彼の気持ちを抑えるんだろう。
いつの間にか、じんわりとする暑さを忘れていた私は、そんなことを考えながらふたたびぼんやりと天井を見上げた。
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