第3章 三日月 -月の満ちはじめ-
自宅への道が、物凄く長い距離に感じる。
暑さのせいも相まって、足取りが酷く重い。
月島くんに言われたことが、自分でも不思議なほどにダメージを与えているようだ。
「……私を見てれば解る、かぁ……」
まぁ、確かに、こんな風にふらふら目的もなく漂うように生きている人に偉そうなこと言われたくないよね。
子供とは言え高校生なんだしさ。
そうだよ、私は何事にも情熱なんて注げないよ。
肉食でも草食でもない、ただただ海の中でさまよう海藻系女子だもん。
そう思うのに、心は明らかに傷ついているようだ。
情けない。
でも、ひとつ、納得できた。
月島くんが気になった理由。
自分を重ねてしまっていたからだ。
踏み込むことを恐れて、出来ないままの姿。
そんなの、勿体ない。
私はもう、何もかもが遅すぎて、やり直すことなんて出来ないけれど
月島くんには、今を後悔して欲しくない。
けれど、私が彼に出来ることなんて何もないし、
あの様子だと、もう何も話なんて聞いて貰えないだろう。
「……お腹、すいたなぁ……」
まだ遠い実家を目指して、私はとぼとぼと歩き続けた。
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