第3章 三日月 -月の満ちはじめ-
「……後悔、するよ」
「……一生懸命やったところで、後悔なんて絶対するだろ」
「……やらないままじゃ、後悔なんてずっと消えない」
月島くんの腕を解放して、私は視線を地面に落とす。
「あの時こうしてればよかった、なんて、考え出したらきりがない。
何をしたって、どんな選択をしたって、後悔なんていくらでもすると思う。
それでも、自分で考えて行動した結果なら、後悔の先に反省をして、前を向けるんだよ」
口先に出てくる言葉は、さっきとは比べ物にならないほど小さくて、月島くんに聞こえているか解らない。
でも、視界に映る月島くんの足は私の方を向いたまま、じっとしていてくれる。
「……でもね、何もしなかったら……ずっとずっと、心に残ってさ……いつまでだって、前を向けない。……月島くん、私みたいになりたくないんでしょ?」
そう言って、眉毛を下げて笑顔をつくると、「……さっきは、すみません……」とばつが悪そうに吐き出した。
「……貴女が僕を心配してくれてるのには素直に感謝します。けど、だからって僕は熱くなるのが正しいなんて思えない。……生意気なことを言ってすみません」
じゃあ、と軽く頭を下げて月島くんは足早に体育館へと行ってしまった。
「………」
東北とは言え、この時期は太陽が眩しく照りつける。
光を避けるように下を向いて、私は短く息を吐いた。
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