第3章 三日月 -月の満ちはじめ-
翌日の日曜日も、私は繋心に付き合って烏野高校の体育館へと来ていた。
二十代OL、聞こえは華やかなステータスを持っているはずなのに、この土日の過ごし方は一体……と頭に浮かぶ疑問をかき消し、
ダイエットや体力づくりの為だ、と誰に言い訳するわけでもなく自分に言い聞かせる。
と言っても、明日からまた会社だし、今日のうちには自宅に帰らなくちゃいけないなと思い、練習は午前中だけ手伝うことにした。
午前の練習は基礎とポジションごとの強化練で、私は基本的にディグ練のボール出しを手伝った。
背が高いから目立つんだよね、と、自然と、目が月島くんを追っている。
ネット際の彼のプレイはとても上手だと思うけれど、やっぱり、周りの子、特に対角の日向くんとは明らかに温度差があるように思った。
休日返上で部活に参加しているのだから、やる気がないわけでもないんだろう。
手を抜いているようにも見えない。
……まぁ、だからと言って私が何か出来るわけでもないし、彼が今のままでいいと思うのならそれでいいんだろう。
日向君たちを見ていると、昔の出来事をたくさん思い出してしまう。
学生時代夢中になったこと。
受験で必死に勉強したこと。
友達と大声で笑いあったこと。
がむしゃらに働いたこと。
……一途に、人を愛したこと。
すべての時間が無駄だった、とは思いたくない。
けれど、夢中になった先に、一生懸命やった先に、どれだけのものが残されていたんだろう。
「……確かに、熱くなるって、……虚しく、なるよね……」
一度も目の合うことが無かった背中に向けて、誰に聞かれることもなく呟いた。
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