第3章 三日月 -月の満ちはじめ-
「……月島くん、部活辞めないといいけど」
「はっ!?おいおい、怖いこと言うんじゃねぇよ」
事のいきさつを帰りの車で繋心に話すと、まぁ大丈夫だろと自信なさげな声を出した。
「烏野は部活動必須じゃないだろ。でも、自発的に入部した。あいつは特進クラスらしいし、そんな中で休日も毎日休まず来てる」
「特進クラス……」
「嫌いなら、とっくに辞めてるだろ」
「そう、だよねぇ」
バレーボールは嫌いじゃない。でも、一生懸命やるのは嫌だ。
そんな子が、あのメンバーの中でうまくやっていけるのかな。
「……気になるか」
「まぁ、ねぇ」
「……香奈、あいつは未成年だぞ。俺は友人が犯罪者になるのは避けたい」
「……馬鹿じゃないの」
ワザとらしく目を丸くした繋心の脇腹にパンチを入れて、私はもう、と鼻を鳴らす。
気になるのは本当のことだ。と言っても、恋慕の情なんてまったく次元の違う話。
私は、どこか心配なんだと思う。
いつでも冷めていて、一歩引いている彼自身が。
熱くなればいいのに、それに躊躇する彼自身が。
きっと、いつか後悔する。
あの時、もっとこうしていればとか、こう考えていたらって、大人になったらたくさん出てくる後悔。
どうせ何をしたって何を選択したって後悔なんてつきものだと思うから。
だったら、やって後悔した方が何倍もいいと思う。
……やらないままの後悔は、きっと、どれだけ時間が経っても消えてくれないだろうから……
「……ま、私に心配されても、って話だよねぇ」
それは小さな独り言となって、ため息とともにかき消された。
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