第3章 三日月 -月の満ちはじめ-
その日、私は気づくと月島くんを目で追っていた。
接点のない生徒たちの中で唯一学校外で会話をした人だからかもしれない。
けれど、それ以上に彼の雰囲気が気になって仕方がなかった。
今の烏野バレー部の生徒たちは、見るからにやる気が漲っていて、誰ひとり妥協をしようなんて考えていないように思う。
全員が良く集中して声も出してキツイ体を精一杯動かしている。
その中で月島くんだけが、ただその中に身をすべり込ませているだけのような感覚に見えた。
体が動いていない訳じゃない。声を出していない訳でもない。
サボることもしないし、プレイ自体は上手な方なんだと思う。
でも、やっぱり、他のみんなと意識の方向が違うように見えた。
部活、好きじゃないのかな。
そんな風に思って、休憩中に繋心に声をかけてみた。
「ねぇ、繋心。月島くんって部活休むこととかある?」
「いや、少なくとも今のヤツラは俺が見てから一回も休んだことねえと思うが……」
「そう……」
繋心の隣に腰を下ろすと、なんでだ?と聞かれて、私は素直にぶつけてみた。
「なんかさ、月島くんだけ周りとオーラが違うっていうか、あまり部活好きじゃないのかなって思ってさ」
「……あー、なるほどな……」
「まぁ部活大好き!って言う子も多いわけじゃないけど、このメンバーであの子だけ浮いているっていうか……あ、でもバレーはすごい上手だと思うよ。読みとか鋭そうだしさ」
「んー……あいつはなぁ……どうしたもんかなぁ……」
繋心もそれは解っているようで、対応に困っているみたいだった。
確かに、無理矢理強引な指導をするのは今のチームに合っていない気がするし、かといって放っておいても意識が変わるわけじゃないだろう。
「……まぁ、本人次第だな」
繋心は自分に言い聞かせるようにぼそりと呟いた。
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