第3章 三日月 -月の満ちはじめ-
あの頃と変わらない校舎に体育館。
懐かしいにおい、景色。
頭の隅に追いやられていた思い出が、あっという間に脳裏に浮かんでは消えていく。
面倒くさいと思いながらここまで来たのは、強引に連れてこられただけじゃない。
何かをしていれば、余計なことは考えなくていいかもと思ったのもある。
今はただこの状況に身を任せて、目の前に広がることだけ考えよう。
休みが終わればまた、独りの時間が増える。
独りになればまた、余計なことを考える。
考えないようにしてるのに、つまりそれは考えてしまっていることに変わりなくて、
結局、毎日毎日喉が狭くなったように重苦しい日々が続くだけ。
ならば、せめて今だけは、この非常識な人に誘われるがままでもいいか。
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