第3章 三日月 -月の満ちはじめ-
「ひっっっ!コッ、コーチが……っ!」
「なんだぁ、日向。変な声出して」
「すすすすすすす、スガさぁん!!コーチがっ!!」
「ん?烏養さんがどうかしたのか?」
「かっ、彼女さん連れて来てるーーーー!!!」
車を降りると、第二体育館脇の水道で頭を濡らしていた男の子が私たちの方を指さして叫んでいた。
「アホ、そんなんじゃねえよ。言っただろ、マネージャー連れてくるって」
「コーチのお友達ですか?」
繋心がそう声をかけると、上級生らしい子が頭を下げながら私を見た。
「おう、こいつもここのOBだ。マネやってたから頼っていいぞ」
「シャーッス!!」
繋心の言葉に、そこにいた二人の生徒が私に勢いよく頭を下げる。
はぁ、とだけ返事をして繋心を睨むと、繋心はそしらぬ振りで顔をそむけた。
「お、おら、とりあえず職員室な。挨拶ついでに許可証貰いに行くぞ」
「……はぁ……」
わざとらしく大きなため息を吐いて、私は繋心の後ろについて職員室へ向かった。
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