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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第2章 身代わりの晩餐会


晩餐会当日、瀬那は兄上の正装を身に着けていた。
兄上と同じさに薄いブロンドヘアーを切りそろえ、ブルーのカラーコンタクトを入れた瀬那は、俺からみても、まるで兄上だった。

『ゼン、どうした?』
「…瀬那…いや、兄上。」
『緊張しているのかい?僕についておいで。謁見を望む貴族の方々が、そのご子息やご息女を連れて挨拶に来るのを、うまくあしらえばいいだけさ。』

見目麗しい兄上の姿で俺に笑いかける瀬那は、言っている台詞もまるで兄上だ。

俺は、王子誘拐を企てている賊が、晩餐会の会場に紛れていることを全く知らなかった。


晩餐会は穏やかに進み、瀬那は兄上を完璧にこなしていた。

次々と挨拶に訪れる子爵や伯爵家の方々と簡単なやり取りをしては、信頼しているだとかこれからも領主をまかせるだとか、士気を高める言葉で締めくくり微笑む。

瀬那の微笑みを見るとなんだか胸がどきどきと高鳴った。

(いやいや、兄上にときめいてどうする!)

とかぶりを振った時、急に会場が暗闇に包まれた。


「「「きゃぁーっ!」」」


会場のそこかしこから悲鳴が上がると同時に隣にいた瀬那に、腕をぐっと痛いくらい強く掴まれ、抱き寄せられていた。背後に瀬那の体温と身体の柔らかさを感じた。

(…!)


ーーキンッ!ー


金属と金属がぶつかる音が暗闇に響く。


暗闇の中、目を凝らして瀬那の存在を確認すると、瀬那が貴族に扮した賊と短刀を交えている姿が飛び込んできた。

『ゼン!俺の後ろに隠れていろ!』

瀬那が俺を庇い、賊の短刀がそのまま瀬那の右肩を切り裂いた。衣装が大きく破れ、布が黒く染まっていく様子が見えた。


すぐに部屋に明かりが戻り、近衛兵たちによって次々と賊が捕らえられた。別室で待機していたイザナ王子とブラウン家当主殿がやってきて、没落貴族の賊集団を一斉に清掃するに至ったのだった。

そのとき、すでに会場から瀬那の姿が消えていた。
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