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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第8章 花咲く蒲公英とクロウタドリ


『オビ、なんか怒ってる?』

地面に降りたったオビさんに抱えられた瀬那さんが言う。

「いーえ。別にー。」

オビさんは少し不機嫌そうな口振りで、けれどもそれとは裏腹に大事そうに瀬那さんを足元からそっと降ろした。

(オビさんと瀬那さんって知り合いだったんだ…。)

今までにこの二人の組合せをみたことがなかったけれど、どうやら知った仲みたいだ。

その手慣れたようなそつがないオビさんの動きに合わせて、瀬那さんが柔らかに、すとん、と地面に降りた。

『ほんと?…ま、ありがとう。助かった。』

瀬那さんは怪訝そうだったけど、あまり追及せずに、スカートの裾の結び目をほどいて、元の生地の形に戻すように両手でその裾を払いながらにっこりと笑った。

僕の方へと向き直った瀬那さんは、優しい笑顔だった。

『リュウも、摘んだ蒲公英ちゃんと取り戻せて良かったね。ナイスキャッチだったよ。』

そう言って、目線を同じ高さにして頭を撫でてくれた。でも、恥ずかしくて目が合わせられずに俯くしかなかった。

ふわっと、甘い香りがした。

すると、囁くように耳打ちされた。

『今日もつれまわしちゃったね。でもまた付き合ってね。』

耳元で囁く可愛らしい声と、震える空気の感触にびっくりして顔をあげると、思っていたよりもずっと間近に瀬那さんの顔があって、身動きができなくなった。

顔に一気に血が巡って来るようだった。



『リュウ、どうしたの?顔が赤いけど、もしかして具合悪い?』

―――こつん。

自分の額に瀬那さんの額があたった。

―――...熱い。



斜め上からオビさんの視線が刺さる。

「…はぁ。瀬那嬢、それ、逆効果。」

それは、オビさんの言う通りで、きっとさっきより顔が赤くなっただろうことが自分でもわかった。

けれど、オビさんの声は瀬那さんには届いていない様子で、

『熱はないみたいだけど…』

と不安そうに僕の様子をうかがっていた。


「…瀬那さん、大丈夫だよ。僕よりも瀬那さんのほうが…。」

僕を心配する瀬那さんの額から伝わってくる熱が僕の体温を上げた。
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