• テキストサイズ

【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第8章 花咲く蒲公英とクロウタドリ


私の身体は、自分の思っていたものとは別の体勢をとっていた。

最初に目に飛び込んできたのは、木漏れ日の光が差し込んで、その虹彩がはっきりと見えるほどに透き通ったオリーブ色の瞳だった。

私はその光の反射に見惚れながら、認識する。

オビに捕捉されたのだ。

気付けば、俗にいうお姫様だっこという体制で、すっかりと身を預けてしまっていた。


抱えられた衝撃で痛みが走ったことを勘づかれたのか、一瞬彼の視線がちらっとこちらへ向けられた。

彼は、私の足場にしようと思っていた枝を避けて、別の枝へと軽やかに鮮やかな着地をした。

「瀬那嬢が降りようとしてたその枝、かなり朽ちてきてる。少しの衝撃で折れてもおかしくない。」

独りごとのようにオビが話す。

こうして抱えられてる理由を端的に把握しつつも、私は困惑していた。


『………ありがと…。』


ひとまず、お礼の言葉をなんとか紡いだ。

あまり上手く状況を整理しきれていなかったけれど、目を逸らしながら理由を説明するオビの耳元は、心なしか赤みを帯びている様にも見えた。
光が当たって、厚みの薄い部分に浮いて見える血管がそうさせているのかもしれない。

じっと、瞬きもなく、何ともなしに見つめていたら、影になったオビの顔が真っ直ぐに私に向けらた。

目があった。

にやりと口元の片方をくぃっと上げ、少し低い声で、

「あれ、俺に惚れちゃった?」

悪戯な表情で揶揄われた。


昨日のイザナとのこともあって、次にオビに会うときにどんな顔をしたらいいのかと些か悩んでいたというのに、こんな風にこんなにすぐにまた会うことになろうとは思っていなかった。

『っ…ふふっ。』

杞憂もいいところだったと、思わず声を出して笑ってしまった。

笑ってしまったことを不愉快に思ったのか、少し不満を含んだ声色で問い詰められる。

「怪我の療養で安静のために城に戻ったんじゃなかったんですか?しかも、なんで今日はメイドのコスプレなんて――」

『コスプレじゃなくて、今日からは暫く侍女の仕事を…!』

「へぇ。最年少薬剤師のリュウ坊を引っ張り回して、木登りして鳥の巣をかき回すのが侍女の仕事だと?」

『……それは…っ。』

間髪入れずに的確な切り返しをされてしまって、ぐうの音も出なかった。

けれど、なんだか、この状況すら可笑しく思えた。
/ 84ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp