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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第8章 花咲く蒲公英とクロウタドリ


ガラス瓶をそっと取り返すだけのつもりだったのに、巣の中の小鳥まで釣ってしまったのがいけなかった。

転げ落ちそうな小鳥を掬って、巣に戻したものの、きっと親鳥は子が拐れるのだと思ったに違いない。巣の主のクロウタドリは、私をすっかり敵と認識してしまって、猛攻に遭う羽目になってしまった。

(君がリュウのガラス瓶を奪い去ったのがいけないのよ!)

鋭い嘴で突かれたら敵わないので、只管に躱してみたものの、久しぶりに、しかもこんな不安定な木の上で身体を動かしたこともあって想うようにやり過ごせずにいた。

この場から逃れるために、後転して倒立をしてから下方の枝に飛び移ろうとしたとき、黒い羽根をバサバサと音をたてた奴は、私の髪の末端についていた髪飾りを咥えて思いっきり引っ張り、私の動きとは反対方向へと羽ばたいていった。

漆黒の君は、キラキラと光を反射していたその髪飾りを手に入れることで、どうやら今回の私の所業から目をそらしてくれるように、その場から飛び去って行った。

髪を引っ張られたおかげで、バランスを崩して後方の枝を使って倒立ができずに、体が宙に舞った。

まぁ、リュウに蒲公英の蕾が入った瓶は投げ渡したし、すでに目的は達成済みだから、いいだろう。

背面飛びで回転しながら、木の下方を確認すると、大事そうに瓶を抱えたリュウ。

と、その隣にオビの姿が見えた。


(なんでここに…)


すこし驚くと同時に、
うっかり地面まで落下しても受け止めてもらえるかな、
という考えがよぎって、
何を甘えているんだ。
と自分に苦笑した。


手をつくはずの枝を通り過ぎてしまったけれど、それよりも低い位置の枝にうまく着地できれば問題ない。
この回転具合なら、下の枝に降り立てるだろう。

この辺りの木々がもう少しだけ小さかった頃に、ゼンとは一緒によく競って登っていたものだ。勝手知ったる遊び場のようなものだ。

さて、着地。と悠長に構えていたら、身体に柔らかな衝撃が加わって、右側に微かな鈍い痛みが走った。


『っ…!』


「まったく、何やってんですか。」
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