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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第8章 花咲く蒲公英とクロウタドリ



彼女は俺の昼寝をしている枝よりも、高い位置の木の枝に立っていて、しかも、キイキイと鳴くクロウタドリの鳥の巣に手を伸ばしていた。

木漏れ日の光に輝く金色の髪は、純粋に綺麗だと思った。

気のせいだろうか胸の奥が疼いた。

巣の主からの抗議の声を気にも留めず、巣の中から何となく見覚えのあるガラス瓶を取り出したところだった。

瓶の上に乗っていたのか、瓶と一緒に小さな雛鳥が出てきて、巣の中から無抵抗にころんと落ちた。キーキーと声だけを上げながら。

(!)

彼女は落下したと思った雛鳥を、ぱっと見事に片手で掬いあげた。そのまますぐに巣の中に戻したが、巣の主は子供を捕られると思ったのだろう。
親鳥が勢いよく、金髪の彼女に襲い掛かろうとしていた。

『…リュウ!受け取って!』

今にも親鳥に襲われそうだというのにも関わらず、明るい声でそう叫んで、ふわりと落とすようにガラス瓶から手を離した。

つられて下を向けば、困惑して表情で上を向く、お嬢さんの探し人である、リュウ坊がいた。自由落下の法則に身をゆだねたガラス瓶が、わずかな空気抵抗を受けてリュウ坊めがけて落ちていく。
頭にでも当たったら危ないと、思わず身体が動いてしまった。
けれど、そんな心配は杞憂で、ガラス瓶はリュウ坊の腕の中にまるで吸い込まれるように落下して、すぽっとその両手の中に納まった。

こんな風に見つかるつもりはなかったけれど、リュウ坊の立つ木の一番下の枝に、片手でぶら下がり、もう片方の手の親指を立てて、リュウ坊の雄姿をしっかり見届けたことをアピールした。

「ナイスキャッチ。」

落下するビンに内心焦ったということを悟られないよう、しっかりと平静を保ち、口の端をくぃっと意識的に上げた。

「!…オビさん!」

足を使い、振り子のように少し反動をつけてから地面に降り立った。

大きなターコイズブルーの瞳を一際丸くして、リュウ坊が俺の顔を見上げていた。

「にしても、リュウ坊。よくうまいことガラス瓶を取れたもんだな。」

感心しながら、彼の頭をぐしゃぐしゃっと撫で、その表情を観察すれば、少し頬を赤らめながら、

「…うん。自分でもびっくりした。」

はにかんだように笑って、続けた。

「瀬那さんが、できるって言ってくれたからかな。」
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