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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第8章 花咲く蒲公英とクロウタドリ



黒い羽根に黄色い嘴、綺麗な囀り。
そして、ガラス瓶の光るものを狙って僕の持っていたガラス瓶を奪うという悪戯を働いたのはクロウタドリだ。
あの木の上に、奴の巣があるのだろう。
きっとガラス瓶はそこに持ち帰ったはずだ。

「瀬那さん!また、探して摘むから大丈夫だよ。」

瀬那さんは僕の手を引いて、少し傾斜のついた地面をぐんぐん歩いていく。強引に手を引かれ、普段自分の歩く速度よりも早いそのペースに、すでに息が上がってしまっていた。

薬草の生態や効能といった知識への探求心は大人にも負けないつもりだけれど、どうしても身体を動かすことはとっても苦手だ。けれど、そんな僕の事情とは無関係に、時々こうやって城内を瀬那さんに手を引っ張って連れまわされる。

また探すとは言ったものの、すでに綿毛にまで育っている花咲く蒲公英の群生の中から、薬効の高いといわれている蕾のものを探すのはかなり難しい。

瀬那さんは、そのことに気付いているのかもしれない。

正直なところ、取り戻せるのなら取り戻したかった。
薬室長がたんぽぽ茶が好きなこともあるけれど、怪我をしている瀬那さんにも煎じて飲んでもらおうと思って摘んでいたのだ。

『リュウが折角集めたものだもの。勝手にもっていかれるなんて私が許さないわ!取り返さなきゃ。それに、リュウはこれから丁度休憩時間でしょう。』

そう、有無を言わせない悪戯な笑みを浮かべた。

「…ふふっ。瀬那さん、楽しそうだね。」

つられて笑えば、綺麗な菫色の瞳がすこし開かれて、すっと細められた。

『うん。リュウといると楽しいよ。』


不意打ちだった。

―――心臓からドキッっと音がしたようだった。

そんな可愛い顔で微笑まれたら、しかも、今日はいつもと違って、ふわふわの女の子の格好で、僕よりもずっとお姉さんなのはわかってるけれど、いつも同じ目線で一緒に過ごしてくれる…友達って呼んだら失礼なのかもしれないけど……僕だって瀬那さんと一緒は楽しい…。

顔に熱が集まってくるのが分かる。思わず顔を見られないように俯いた。

『あ、ごめん早く歩きすぎたかな?もうすぐだから、リュウ頑張って。』

瀬那さんは、僕が疲れてしまったと勘違いしたみたいで、頭をポンポンと撫でてくれた。余計に顔が熱くなった。
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