第2章 身代わりの晩餐会
事の発端は、王室と古くより親交の深い、公爵の爵位を与えられているブラウン家の三男坊の謀反ともいえる行動だった。
彼は過去に城を追放された没落貴族の賊のような集団と関わりあいがあったようなのだが、ブラウン家の当主の地位を、彼の兄でもある長男が引き継ぐことが決まってから、以前にも増して、その賊集団に傾倒していったのだ。
現在の当主が、自分の息子が危険な人物と関わり過激な思想に偏っていってしまったことに激高し、三男坊の実情を洗いざらい調査したところ、その賊集団が王子誘拐を企てているらしいことがわかったということだった。没落貴族たちの狙いは王子を誘拐し傷つけ、身代金と過去の恨みを晴らすことを目的としているらしく、三男坊はイザナ王子の髪を切り取って持って帰ってこいという指示を受けていることまでを突き止めていたた。
賊の狙いを知ったブラウン家当主は、今度の晩餐会に王子誘拐が実行されるかもしれない、ということを王室に報告したのだった。
誘拐の企てが実行される確証はない。
けれども、万が一王子誘拐などの大罪を起こせば家の爵位の剥奪やとりつぶしは免れることではない。しかも、没落貴族の賊化した集団が絡んでいるとなれば、ブラウン家のみの問題とはいかず、ただ単純に三男坊を処分するだけでは解決できないことだった。
王室も古くからの友であるブラウン公爵家を救いたい意向もあり、イザナ王子の身代わりを置いて晩餐会を開催し、賊を一斉に捕らえてしまおうということになったのだった。