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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第7章 双子のパラドックス※




俺が瀬那を大切に想えば想うほどに

瀬那が遠くなっていく。



一度だけ、彼女の俺への認識を聞いたことがあった。


いつだったか、いまでは覚えていないけれど。



―――私は、イザナをとっても大切に想っているよ。

大切なイザナ。

大切なゼンも、そして、王室も。

私はいつだって命を賭しても守りましょう。


そう、瀬那は言っていた。

とても優しい声で言っていた。




いつだって俺は瀬那に気付かないうちに守られている。

まるで未来を見通すかのように

この国の毒になるものを吸い上げる。

だから、気付かないうちに、

見知らぬ土地で、見知らぬ場所で、

彼女が命を落とすのではないか、心配なのだ。


俺たちの気持ちが同じ座標に乗ることは

きっとない。


寄り添って同じ方向を向いているようで、

俺たちは全く別物なのだから。

たとえ天才と呼ばれるほどの物理学者でも

きっと難解な方程式の解を導き出すことなどできやしないだろう。

近似の解は、重ならない。





似ていたから出会えた。

似ているから一緒にいられた。

一緒にいるうちにもっと似ていった。

元は同じ場所に二人ともいたはずだった。

けれど今では二人に流れる時間までもがまるで違うよう。

今の、瀬那はまるで旬の果実だ。

どんどん成長しながら芳醇な香りを纏うその実を、

そう遠くない未来に

何者かに

攫われてしまうのではないかという予感がするのだ。


奪っていくものは、渡り鳥か獣の類か――――
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