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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第7章 双子のパラドックス※


先ほどの薬のせいなのか、それとも絶え間なく唇を口腔内を侵されているせいか、次第に瀬那の身体から力が抜けていくのがわかる。

『…ん…はぁっ…。…イザナ、くらくらする…。』

少しだけ攻めるのを緩めれば、伏せられていた瞼をうっすらと持ち上げて、息も絶え絶えに、囁くような可愛い声がした。
とろとろに溶けそうな上気したこの表情は、瀬那も自分では知らないだろう。


あぁ、もっと。

仕事のことばかり、統真のことばかり考えて、こんなに近くにいるのに遠く感じるのが悔しくて彼女の唇を貪った。

「瀬那…怪我、見せて。」

俺は瀬那の上に馬乗りになり、その寝間着を剥いだ。
深い口づけと薬の効き目もあって、力の入りきらないその華奢な身体から布を剥ぎ取るのは、容易いことだった。

右肩に、包帯がとれたばかりの生々しい傷が紅く浮かんでいる。その下には、古い刀傷。あの日の傷だ。

――切り傷と刺し傷か。

絹のように真っ白な肌に、暗い赤色の傷跡が不釣り合いで、特にその刺し傷の周辺に薄く残る鬱血が目についた。
打撲にしては局所的で、怪我をしてから日数も経っているというのに、まるで、きつく誰かに吸われたような跡だ。

そんなはずはないが、それが俺には誰かの所有印に見えた。

「瀬那これは何?誰が瀬那にこんな跡をつけた?」

『それは賊に刺された傷で、その時に強く打ち付けたから…。』

瀬那に問えば、そのバイオレットの瞳が揺らいでいた。
嘘はついていないようだが、詳しいことは答える気がない様子だ。

「…ほぅ、それは賊には厳しい処罰を与えなければな…。だが、それを赦した瀬那にも、仕置きがいるな。」

幼いころの瀬那と俺は髪色も背格好もよく似ていて、本当に双子のようだった。俺の真似をする瀬那は、特徴を捉えゼンでも一瞬見間違うことがあるほどだった。
けれど、瀬那は近くの存在になればなるほど、遠くなる気がした。

武術において手を抜くことはしないが、生きることに関して、急に手を抜こうとするのだ。目的のためには自分の身を賭してもいいと、どこか自分に対して投げやりなのだ。俺はそれを変えられずに今に至っている。

こんなにも、愛してやまないのに。
もどかしいほどに伝わらない。
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