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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第7章 双子のパラドックス※


俺の腕の中で、瀬那は大人しく謝罪の言葉を口にした。

瀬那は男の真似ばかりしているが、不意に艶っぽい仕草をする。勘のいい奴なら直ぐに女だと分かるだろう。
思わずドキリとさせられ、誰にでもしてくれるなよ。と心の中で独りつぶやく。

そして、何より心配なのは、こうやって賊を宿敵かのように追いかけていることだ。

「瀬那、賊を執拗に追っても瀬那にとって何にもならないぞ。」

『けれど、統真につながるかもしれない…。』

予想通りの回答だった。


瀬那は聡明だが、決して曲がらない何かを持っている不思議な女だ。
初め、俺の影武者役が女であることに驚いた。
しかし、実際のところ、俺に容姿が似ていて、武術も長けている瀬那は稀有な存在だった。

実際ともに過ごすなかで、隣にいて気分を害されることはなかったし、ゼンともずいぶんと打ち解けていた。

(ゼンは俺よりも瀬那に兄を見ているところがあるが。)

瀬那は城のしきたりや作法もそつなくこなせるようになり、気付けば隣にいるのが当たり前のような、いなくなれば淋しさを感じてしまうようになっていたのだ。

瀬那が強盗や人を傷つける不届き者を親の敵かのように追うようになったのは、あの晩餐会の日からだ。

――瀬那は、あの日、俺やゼンを攫おう、傷つけようとした賊の中に、兄の面影を持つものがいたというのだ。ゼンをその刃から庇い瀬那を切りつけた輩が、彼女の実兄の統真だったと。

過去の出来事だ。
しかも顔のほとんどを襟巻で覆っていて誰かを判別できないほど暗かった。何より会場にいた賊は全員衛兵らにより捕らえられたはずだ。

思考の中で過去を振り返っていると、ぽつりと瀬那が統真と呟いたのだった。

「瀬那、統真殿は瀬那の兄上で、ホシミ家の次期当主殿だ。下手な疑いをかけるべきではない。」

『それは、承知しています。』

そのバイオレットの瞳は承知している様子ではない。

「瀬那」

彼女は過去に、統真に囚われている。
俺の側近としての職務に専念すればいいだけなのだ。

瀬那を此処に呼び戻したかった。

―――俺を見ろ。そう強く願った。
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