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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第7章 双子のパラドックス※


「まさか、あの男を庇って手負ったなんてことはないだろうね。」

意表を突かれた質問だった。
イザナは私の髪を撫でていたその手を、私の頬へと添えた。

『庇うほどの余裕があれば手負いなどしなかった。』

声に出すつもりはなかったけれど、気付けば声に出ていた。本心からの言葉。

実際のところ、オビには助けれらただけで、庇うようなことはしていない。嘘は言っていないから大丈夫と自分を庇うような思考を巡らせてから、イザナを見れば推し量るようにこちらをじっと見つめていて、すこし低めた声で、

「毒を盛られて賊などに不覚をとったのか?」

呆れた目をしてそう言った。

『!』

思わず目を見開いてしまった。

「どうした。驚いた顔をして。」

図星です、と答えてしまったようなものだった。
ふっとイザナの口元が緩んだ。

『なぜ、毒だなんて…?』

「あの甘ったるい薬はお前の毒消し薬だろう?」

あぁ、そうだ。さっき、イザナはあの薬を口に含んだのだった。毒に慣らされてきたのはこの人も同じ。薬の味を覚えていたのだ。

(イザナらしい。)

きっと、私が何故薬室にいたのかを確認する意味もあって、人の薬を一気に自分の口内へと呷ったのだろう。

『…イザナには敵わないな。』

なんとなく張りつめていた気持ちが緩み、自分の眉尻がすっと下がったのがわかった。

「当たり前だろう。瀬那のことは誰より知っている。」

『流石、兄様。』

昔を懐かしむように、自然と表情が和らいだように思う。
その瞬間、先ほどまでベッドに腰を掛けていたイザナが、布団の中に潜りこんだ。イザナの腕がするっと身体の下に通されて、すっぽりとその腕の中に包まれた。

「懐かしいな。」

幼いころは、よくこうやって二人で昼寝をしたものだった。というのも、私が顔が見えないように頭だけを出し、イザナは布団をすっかりかぶっておき、家臣の人が来たらイザナだけ抜け出す、という悪戯のためだ。

「心配した。」

ぽつりと言葉が降ってきた。

『ごめんなさい。』

ロイヤルブルーのその瞳を見つめて謝れば、自分の額にイザナの額がこつんと当てられた。

「勝手にいなくなるなよ。瀬那」

そっとイザナの頬に自分の頬を寄せ

『はい。気を付けます。』

と耳元で答えた。
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