第6章 交錯する想い
何かを企んでいるかのような、いじわるなオリーブ色が輝く。
私がこうして、先日の諜報活動中に怪我を負ったことは、伏せてくれるらしい。
オビは向かいのベッドで寝転んでたが、にやりと私を見つめながら、私の寝ているベッドにどかっと腰を下ろした。
「黙っておくかわりに、瀬那のこと教えてよ。」
『……?』
オビがなんと言わんとしているのか、その本意が読み取れずに首を傾げる。
彼の長い指がゆっくりと、寝ている私の頬に触れる。
「…瀬那…。」
そして、彼の顔が私の顔の上に影を作った。
『……オビ?』
オビの手がひんやりと冷たくて気持ちいい。
よく“人肌が恋しい"なんていうけれど、こういうことなのかなって思った。
今までは、“寒い時に自分が温まるための他人の体温がほしい"って意味だと思っていたけど、今は、オビの少し低い体温が、普段よりも高くなっている私の体温に混ざってくるような感じが、不思議とすごく安心する。
――そのオリーブ色をもっと見ていたい―
そんなことを思いながら、ゆっくり目を閉じる―――
自然に目を閉じる瀬那の睫毛の長さが目についた。
まさか瀬那が俺をすんなりと受け入れたのかと驚けば、すーすーと気持ち良さそうな息づかいが部屋に響く。
(…寝てる…!?)
ちょっとからかってやろうかと思っての所業だったが、完全に寝込みを襲っている図になってしまって、ものすごく恥ずかしい…。
目の前の人物はあどけない顔をしてすやすやと寝ている。
無防備すぎるその表情に、すっかりこちらの毒気を抜かれてしまった。
『…オビ……』
(!)
不意に小さな声で名を呼ばれて、再び心臓が跳び跳ねた。
しかし、そのあとに続く言葉はなく、まだ夢の世界から戻ってきてはいないらしい。
(…寝言…か…。)
昨日、薬室長からは、瀬那が星見家の出身で、今は王室に仕えて諜報役をしていること、髪色が似ているので兄殿下の影武者のようなことをしていた、ということを聞いたが、本人に直接問いたいことがあった。
何故あの日あの店でウエイターなどをやっていたのか、
何故男装ばかりしているのか、
主との関係性がどんなものなのか…。
目を覚ましたら、どうやって問おうかと思案しながら、そっと頬を撫でた。