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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第6章 交錯する想い



―――――ゼン。

―――あれ、この後って…


瞼の裏に薄明るい光を感じて、目を覚ます。
夢のまま唇に熱が残っているようだった。

右肩に痛みが走るが、子供のころの怪我とはまた違った刺すような痛みで、あぁ、そういえば、強盗に刺されて一向に良くならないんだったと、夢から醒めたことをゆっくりと認識する。


意識が身体につながってきて、わかる。

尋常じゃなくだるい。


『…んっっ。はぁっっ。はぁ。』

息をするのもやっとだ。

重い瞼を押し開ければ、そこは見慣れた薬室の奥の隔離部屋の天井だった。


「瀬那嬢、お目覚めですか?」


聞き覚えのある声。

なんだかデジャブを感じる。

声の主を確認すれば、そのオリーブ色の瞳にランプの明かりがゆらりと映っていた。


『……オビ?』

さんざん魘されて、主の名前を呼び続けていた瀬那が、湿度を含んだ声で、俺の名を呼んだ。

酷い汗で髪がじっとりと湿っている。

顔が赤い。熱がまだあるんだろう。

「水、飲む?」

『……飲む。』

寝起きの瀬那は、やけに素直だった。
水の入った吸い飲みを差出して、口に突っ込む。

『ん…。オビ、なんで、ここにいるの?』

「どこぞのお姫様が治療中にも関わらずに部屋を抜け出して困るからと、見張り役を仰せつかっておりまして。」

苦虫をかみつぶしたような顔をしながら、瀬那が水を飲み干す。

『…っぷは。ゼンにも、私が倒れたこと伝わってるの?』

(倒れた自覚はあるのか…。)

「えぇ、主には瀬那殿は風邪で寝込んでいる、と。」

薬室長からは、ただの風邪だと思うけれど、城の外でもらってきたものだから、新しい感染症の可能性はゼロとは言えない。ゼン王子は見舞いには来ないように、とも付け加えられていた。

『…。』

「…強盗に刺されて、毒で高熱を出して寝込んでます。って俺から伝えてもいいんですけど。」

と意地悪を言えば、キッとこちらを睨む。

『それは言わないで。なんでもするから。』

「なんでも、って。まぁ、仕事中に斬られただなんて、隠したい気持ちもわからなくないし、伝えたところで主たちに、今よりもただ心配かけるだけだから、黙っておいて差し上げますよ。」

懇願するバイオレットの瞳の中のランプの明かりをじっと見つめ、俺は言い返した。
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