• テキストサイズ

【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第2章 身代わりの晩餐会


『ゼン、今日から私のことも兄上と呼んでくれ。』

「どういうことだ?」

『いや、来月に開催される晩餐会でイザナ殿下の誘拐を企てている不届き者がいるらしくてな。当日は私が代わりに表舞台に立つ予定なんだよ。』

その時に瀬那とうっかり呼んでしまえば身代わりの意味がなくなってしまうから、兄上と呼ぶことに慣れておくようにと、イザナ王子から言付かってきていたのだ。

「まぁ、瀬那は実際年上だから兄上と呼ぶことに違和感はないが。」

『それはありがたいお言葉。勿論ゼンも狙われる可能性があるから気を付けないといけないよ。とはいえ、必ず守ってみせるがね。』

けれども、もともとそんな不穏な因子があるのなら、先に摘み取っておけばいいのでは?と至極当然な問いを投げかける。瀬那は眉をハの字にして、色々と大人の事情があるそうだよ。と詳細を知ってか知らず言葉尻を濁して部屋を出ていった。



ゼンの部屋から少し離れたまで廊下を歩いていくと、柱の陰にイザナ王子が立っていた。

「瀬那、ゼンには“兄上の件”を伝えたかい?」

『兄様。えぇ、ちゃんと伝えたわ。自分より年上だから違和感はないって。』

私は普段はイザナ王子を兄様と呼んでいた。イザナと呼んでもいいといっていたけれど、ゼン王子に自分の名を呼ばせていないのに私がそう呼ぶわけにもいかない。それに、ゼンの身代わりをするときにイザナを兄様と呼んでもそれほど違和感がないし、なにより自分にも統真という実兄がいた。

「おや。ゼンはまだ瀬那が女性であることに気付いていないのかな。」

『さぁ、どうでしょう。案外気付かないものなのかもしれませんし、もう気付いているのかも。イザナ殿下の身代わりをするうえではゼンには“兄上”と思っていただいていたほうが都合がいいですし、いつも悪戯をしているみたいで私は楽しいです。』

「まったく瀬那は面白いな。」

言葉とは裏腹にロイヤルブルーの瞳に長いまつ毛が影を作った。どうしたのだろう?と思って、

『それに、イザナ殿下とゼン殿下のためなら私はいつでも身を賭してお守りしますよ。』

そう続ければ、イザナ王子は曖昧な笑みを浮かべた。
/ 84ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp