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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第2章 身代わりの晩餐会


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私がこの城に10才という幼さで仕えることになった一番の理由は、イザナ王子やゼン王子の影武者として有事の際に身代わりになること。

特に、イザナ王子と髪色が似ており、年が近く、武術もそれなりに腕が立ったことで白羽の矢が立ったのだ。


私には王子の身代わりとしてふるまうために必要な知識―テーブルマナー、武術、一般教養―の体得のために様々な稽古事が課されていた。
男性と女性のどちらの作法も身に着ける必要があったため学ぶ量は多かったが、物事をこなしていく過程自体は案外と楽しめる自分がいた。

稽古以外の時間はイザナ王子やゼン王子とともに過ごした。できるだけ二人の仕草や関係性から生まれる雰囲気を纏えるようにとのことだった。
ともに過ごす時間が長くあったことで、二人の王子それぞれと妙に打ち解けた関係を築くに至っていた。


コンコンとドアをノックする。ゼン、失礼します。と声をかけて部屋へ入ったがゼンは気付かない。ふぅ。と一呼吸置き、イザナ王子を思い浮かべながら声を出す。

『ゼン、ちょっといいかな』

「あに…あぁ、なんだ瀬那か。最近は油断していると本当に兄上と間違ってしまいそうなくらい似てきたな。」

集中して書物を読んでいたはずの彼からは、その声で揶揄うのはやめてほしい…と非難の声とともにじっとりとした視線が送られてきた。

まったく同じ声色は同じとはいかないが、もともと落ち着いた中性的な声であったため、声の出し方や抑揚の付け方を真似れば、懇意でない人間なら容易に騙し通せるのではないかと思わせるほどにはイザナ王子に似せられるようになっていた。

『いや、普通に声かけたけれど集中していて気付いてくれなかったからさ』

イザナ王子の声色を真似たまま続ける。

「まったく、一人の兄上が二つの正反対の性格をもっているみたいだ。」

ロイヤルブルーとバイオレットの視線が交わり、互いに笑う。
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