第6章 交錯する想い
未だに城内をやみくもにかけている赤い髪の少女を視野の端に捉えた。
彼女のところへと向かおうと思っていたこともあるし、
彼女の探し人である目の前にいる瀬那は
ここから動く気はないようだ。
どちらかといえば、動けない。というのが正しい気がするが。
仕方なしに、この不可解な頼みを引き受けることにした。
「治ったら、美味い酒、な。」
そこから動くなよ。と、きょとんとこちらを向いた彼女を置いて、お嬢さんの元へと屋根のある廊下を急いだ。
(…雨じゃなかったら、ここから飛び降りていけるんだけどね。)
白雪くんを視野に映せば、ナナキ…いや、オビのそのオリーブ色の中に優しさが溢れていて、ドキリとした。
私の依頼の対価に「美味い酒」を請求し、颯爽と、軽い足取りで彼女の元へと向かっていった。
『…ふぅん。そんな顔もするんだね。』
さてと、彼女はいったいガラク先生から何の薬を託されて、私を探しているんだろうか。
じわじわと身体に走る神経が悲鳴を上げ始めるのをこらえながら、彼の後ろ姿を見つめて、目を閉じた。