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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第5章 嘘つきたちの再会


――オリーブ色の瞳の彼が訝しそうに、そこにいた。


『あ、ナナキ君。久しぶり。』

口元に弧を作る。

「やっぱりトーマか。さっきは、はじめましてって言ったくせに。」

彼は口をとがらせた。

『瀬那として会うのは初めてなんだから、はじめましてでいいでしょう。』



バイオレットの瞳の上の瞼が重そうだった。

「まぁ、そういわれれば、確かに。」

ただの屁理屈だと思ったが、間違いではないから、納得することにした。


「トーマって、偽名名乗ってまで、なにを…」

強盗退治をしているのかと、問いたかったがやんわりと遮られた。

『オビだってナナキって名乗ったじゃない。名前を教えてっていったのに、嘘ついて。』

酷い。と、今度は彼女が口をとがらせて、俺を非難した。

「酷いって。それは、お互いさまだろ。」

『たしかに…。』


それにしても、顔色が悪い。



――細かいことは、今は言う気がないってことか。


「で、傷は?」

短く問えば、

「ん、大丈夫。…慣れてる。」

明らかに大丈夫ではない様子で、気の抜ける返事が返ってきた。


そのとき、遠くで、聞き覚えのある声がした。


「瀬那さーん。」


赤い髪のお嬢さんが、別の廊下をかけていく姿がみえた。


手には何かを持っているようで、

しかも、今、自分の目の前にいる人物を探しているらしい。


「赤髪のお嬢さんが探してますよ。」


瀬那がバツの悪そうな表情を浮かべて、

小さく、『ばれたか…。』とつぶやいた。


さらに訝し気に様子を観察すれば、バイオレットの瞳に、曇天から降り注がれる雨粒が映っていた。


『ゼンの伝令役であるオビ殿に頼みがある。』

急にかしこまって、前置きする。

「オビでいい」

と短く返せば

『じゃあ、オビ、白雪くんの持っているものをもらってきてもらえない?薬室には後でちゃんと行くからって。私はまだ死にたくない。』

不可解な頼み事だった。

「?」

『もし見つけたら首に縄を付けてでも連れて帰ってこいって、薬室長に言われているだろうから。』


うら若き可愛い乙女にそんなことさせられないでしょ?と半ば強引な理由付けだった。

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