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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第1章 幼き日の出会い


(負けたのが悔しいのかな・・・)

「まったく、困った弟だ。」

イザナ王子はため息交じりに困ったような表情で、けれどもその口元は弧を描いていた。

イザナ王子とゼン王子の関係性を垣間見ることができたような気がするのと、何よりゼン王子のその悔しそうな不服そうな表情からその心中を慮っていると、なんだかとても可愛らしい小動物を見ているかのような心持ちになった。

『…ふふっ。可愛いですね。』

思わず、堪えきれなかった小さな笑い声と心の声が漏れてしまった。

すると、二人のロイヤルブルーの双眸が私を捉える。

(あぁ、声に出てしまった・・・。)


瀬那殿はややばつの悪い表情を浮かべていたが、こちらの顔色を窺うわけでもなく、自分自身に失笑しているかのようだった。

今まで緊張していたこともあるだろうが、何事にも興味がないような無表情で、どのような人なのかと思っていた。

剣技はゼンより勝り、職務を果たすのに十分な腕前であることは試合運びからくみ取ることができた。

急な手合わせの話にも大きな動揺は見えず、肝が据わっており有事にも冷静に対処できるだろう。

自分の身くらいは自分で守ることはできそうであるし、場合によっては、私やゼンの背中を守ることも任せてもいいかもしれない。そのふわっと和らいだ表情とその雰囲気に、一瞬見入ってしまった。

「そんな風に笑うこともできるのだな。」

瀬那殿に声をかければ、困ったような表情を浮かべて、長いまつ毛がバイオレットの瞳にわずかな影を落とした。ゼンに向き直り、その表情を引き締めて謝罪の言葉を述べた。

『ゼン殿下、失礼をお詫びいたします。』

「きっ…貴公は、私のことを、その、か、可愛いと言ったのか!?」

と顔を真っ赤にしてゼンが瀬那殿に食ってかかっていた。

『笑ってしまったことはお詫びいたしますが、ゼン殿下への敬愛の気持ちから可愛いと申し上げました。瀬那とお呼びください。』

そう言い放ち、腰を曲げてお辞儀をしてから悪戯な可愛らしい笑みを浮かべていた。
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