第5章 嘘つきたちの再会
木々につままれたほっぺたをさすりながら、お互いに声を出さずに笑えば、
「おい、おまえたち、いつまでもじゃれ合ってないで、ちょっと紹介をさせてくれよ。」
とゼンにこの茶番劇の幕を下ろされた。
「オビ!お前にも紹介したい人が来ている。まだそこにいるんだろう。隠れてないで出てきてくれないか。」
ゼンに呼ばれてバルコニーから、雨に濡れた男が現れた。
帽子を深くかぶって襟巻を巻いているが、すらっとした均整の取れた体躯で――。
その濡れた帽子を外し、口元まであった襟巻をほどく。
「この男は、クラリネス第二王子付きの伝令役として、俺の傍に置いているオビだ。」
―――――そこには、
黒髪の短髪に、
色白の、
オリーブ色の瞳をした――
「オビ、こちらは俺たちの幼馴染、ん、まぁ、俺にとっては仲間というよりは家族なんだがな。」
とゼンが私を紹介した。
―――――つい先日、私を救ってくれた猫のような顔つきの
ナナキと名乗った、あの男が立っていた。
「瀬那だ。」
主に呼ばれて部屋に入れば、そこには、薄いブロンドヘアーを一つに結んだ騎士が立っていた。
まるで兄殿下のような、気品ある微笑みを浮かべながら、恭しく丁寧にお辞儀をする。
『お初にお目にかかります。』
主とのやり取りは聞いていた。
主が兄上と呼ぶ人物。
ミツヒデの旦那と木々嬢とも甚く懇意な様子で、
けれども、どこかで聞き覚えのある声で―――
『瀬那・ホシミと申します。』
腰を折ったまま顔だけ少し上げた瀬那の瞳は、磨き上げられたアメジストのようで吸い込まれそうなほど美しくて――
『どうぞ瀬那と呼んでいただければ。オビ殿。』
数日前に、強盗団を伸して俺に託した――
そして、毒に侵されて一晩介抱する羽目になった男の格好をした女―――
――― トーマ だった。