第5章 嘘つきたちの再会
木々もミツヒデと同じく、ゼンの側近で、美人女性騎士だ。
セミロングの金髪に眉目秀麗。
彼女の剣さばきは大変華麗で、彼女の容姿に見とれてしまってはその無駄のない剣技に斬り裁かれるだろう。
もし自分が男だったら、間違いなく木々をパートナーに選ぶだろうな。
(だからこそ、ミツヒデと取り合いになるんだけどね。)
彼女とは同い年ということもあるが、さばさばしていて、為すことに筋が通っていて、尊敬している。
まるで姉のような存在だ。
そのまっすぐ透き通った、凛とした振る舞いは、一緒にいて居心地が最高に良い。
『反応が面白くって、つい。』
ぺろっと舌を出して、てへっと笑う瀬那は、男装こそしているが、私から見たら、ただの女の子だ。
気ごころ知れた人前だからこその振る舞いなのはわかるが、もうちょっと自覚を持ったほうがいいと思うこともある。
イザナ殿下の双子の弟だとか妹だとか、クラリネス城内の七不思議のように噂され、本人にはいまいちその自覚はないようだが、その美しい容姿も相まって、かなり人気がある。
男装姿をしていることが多いので、イザナ殿下の弟と称されることのほうが多いが、夜会でのドレス姿には会場から多くのため息が聞こえたほど。
隠れファンも多いので、そんな可愛らしい隙のある仕草を軽々しくしていたら、衛兵の中からでもよからぬことを考えるやつが出てきてもおかしくないだろう。
瀬那は強いから、勾引かされるとか不貞をはたらかれるといったことは、そうそうないとは思うけれど、力ではどうしても男性に敵わないことは私もよく自覚している。
(無防備なのは私たちの前だけにしてよね。)
瀬那の強さ
…本人曰く「長剣は並の使い手」との自己評価をしているが、間違いなくゼンの近衛兵団員の上位と対等な力量を持っている。
だが、特に本領を発揮するのは短刀での接近戦だ。
王子たちの身側にになったり護衛をしたり、最近では諜報役という任務で身に就いたものもあるのだろう。
相手を殺さずに一瞬で倒す技術としなやかなに繰り出される剣戟は、シンプルで潔くて、好きだ。
―――直接言葉にすることはないだろうけど。
「私を出汁に使って遊ばない。」
瀬那の頬をつねったら、ちいさな悲鳴が聞こえた。