第5章 嘘つきたちの再会
木々とハグをしていれば、ミツヒデからの視線がぐさぐさと刺さるようだった。
ゼンのせいにしてまで、木々から引き離されたので、すこし悪戯をと、
『大丈夫。木々を取って食ったりしないよ。』
とミツヒデの耳元で囁けば、ひとり慌てふためいていた。
―― 相変わらず初心ね。
ミツヒデは、近衛兵団員の一人であるが、剣の腕はかなりのものだ。今やその長身から繰り出される剣技に並ぶ同年代の衛兵はいないだろう。17才の時からゼンの側近としてずっと城に仕えていて、ゼンとの絆の深さは一番だと私は思う。
私のほうがゼンとの付き合いは長いけれど、やっぱり、男同士だからこそ、いや、ミツヒデとだからこそゼンも全幅の信頼を置いているんだろうな。と思う。
――きっと、私にはその役目は果たせない。
私にとってもミツヒデは家族のような存在だ。
イザナとゼンと兄弟のように育った、というのであれば、ミツヒデは同じ屋根の下で暮らした仲の良い従兄といったところだろうか。
年は彼のほうが上だけれど、一緒にいると私のほうが姉のような振る舞いになってしまうのは、彼が純朴だから。
けれども、その優しいブラウンのまなざしは、とても暖かくて心地よくて、茶化したり困惑させて振り回してばかりだけれど、実のところ彼のもつその安定感にいつも安心させられる。
頼りきっているのはゼンではなくて私のほうなのかもしれない。
「瀬那、顔がにやにやしてる。ミツヒデをいじめても何にもならないよ。」
そう木々に叱られた。