第5章 嘘つきたちの再会
懐かしい思い出に意識を向けて、そこから戻ってくると、
瀬那が木々へ手を伸ばし、彼女の身体をその身によせて、木々とハグをしていた。
『会いたかったよ』
「私もだ。瀬那。久しぶりだね。」
瀬那は木々よりも少し背が高い。
二人とも容姿端麗で、身にまとっているものこそ二人とも騎士の衣装ではあるが、向かい合って微笑み合う姿はまるで絵画のような光景だ。
そもそも、木々が誰かと厚い抱擁を交わすこと自体が珍しい。
実際、瀬那以外とは見たことがない。
…というか、もしそれが別の男だったら、もうほんとショックで起きれなくなりそうだ。
「瀬那、あんまりそうしてるとゼンが妬く。」
そういって、木々から瀬那を引きはがした。
イザナ殿下に似た気品を纏っている瀬那がこうやって騎士の姿をしていると、おとぎ話の王子様のお手本みたいで、いつも凛々しい木々が、より可愛く見える。
(…っ。木々が可愛い………!)
『ミツヒデ、ひとりで青くなったり赤くなったり忙しいな。』
自分の心の声に動揺すれば、瀬那に機微を捉えられてしまった。
俺が、木々に対して友人や仲間といったものへの親しみ以上の特別な感情を抱いていることも、一番最初に気付いたのは瀬那だった。