第5章 嘘つきたちの再会
『ゼン、入ってもいいか?』
懐かしい声がした。
綺麗な装飾の扉の向こうから、バイオレットの瞳に薄いブロンドヘアーを一つに束ね、騎士の格好をした瀬那が顔を覗かせた。
『あ、ミツヒデ、今って大丈夫?』
「あぁ。大丈夫だ。」
出てきたのがミツヒデでよかった。取り込み中じゃないの?と遠慮がちに顔だけ出す。その髪色はやはりイザナ殿下と同じ色で、その整った面立ちから双子と噂されるのも無理はない。
その姿にゼンも気付き声をかけた。
「あぁ、兄上!久しぶりだな!」
ゼンが昔とかわらず瀬那を兄上と呼ぶ。
どうしても幼いころからの癖がぬけず、複数人の前だと兄上と呼んでしまうのだという。
『ゼン、久しぶり。少し背が伸びたかな?』
身長がのびたと言われて、はにかむゼンは、そうそう伸びるか!と悪態つきながらも、子供の頃の幼い表情をみせる。
『って、やっぱり、そんなにかわらないか。』
そう茶化す瀬那も昔と変わらない。
二人をみていると本当になかのいい兄弟のようで、ゼンとそんな関係を築いている瀬那を少し羨ましく思う。
『ミツヒデ、元気だった?ゼンにいじめられてない?』
瀬那は俺にとっても幼馴染のような、家族のような存在で、大切な仲間であることにはかわりない。
「あぁ。大丈夫だよ。瀬那も長期の城外任務お疲れさま。かわりないか?」
『最近はずっと城の外だったから、少々腕が鈍ってきている気がする。ミツヒデ、時間あるときに鍛練に付き合ってくれないか?』
すぅっと細められる瞳に吸い込まれそうだった。長年一緒にいるが、ふとした仕草に心臓が跳ねる時がある。
瀬那には独特の人を惹きつけるカリスマ的なものがある。
カリスマ性 ――そういう意味でも、俺からみると瀬那はイザナ殿下によくにているのだ。
ミツヒデには全然勝てないからなぁ。そう、彼女は言うが、幼いころには瀬那に一度負けたことがある。手加減をしたつもりなどは毛頭なかったのけれど、そのとき、本人から、『女だと思って手加減するな!』と叱られたんだ。
それ以降、瀬那との手合わせは、もちろん手加減せずに、(加減などしたらこちらがやられるから、)必死でやってきて何とか負けがないというだけなのだ。