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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第1章 幼き日の出会い


通されたのは修練場だった。

軽い装備を付けて竹刀を持ち、素振りをする。
自分自身では剣術に長けていると思ったことはないが、基本的な心得は物心ついたころから教え込まれてきたものがあった。

(仕えるだけの力量を測りたい、といったところか)

並みの衛兵くらいとは何とかなるのでは、とぼんやりと思っていた。

「瀬那殿。この者と一手勝負いただきたいがいいかな。」


イザナ王子の声の方向を向けば、そこには自分よりも幼く見えるロイヤルブルーの瞳が美しい銀髪の少年が、同じく竹刀をもって立っていた。

『承知いたしました。よろしくお願いいたします。』

「よろしく頼む」


一礼を交わし、間合いを取り、竹刀を打ち込むタイミングを計っていると、少年が先に打ち込んできた。竹刀の先端でその攻撃を軽く往なし、間髪入れずに次の剣戟が振ってくる。
それを躱して一度間合いをとると、少年がさらに打ち込んできたが、少しだけ動作の入りが遅かった。その一瞬の隙を見逃さずに、その振り降ろされた竹刀の手元を思い切り打ち返した。


「…っ!」

竹刀が宙を舞い、カランと音を立てて落ちた。


「勝負あり、だな。瀬那殿、お見事。」

イザナ王子は、ぱちぱちと拍手をしながらそう言った。

『ありがとうございました』

「紹介が遅くなって申し訳なかったが、今手合わせいただいたのは、私の弟のゼンだ。」

たしかにその瞳の色はイザナ王子と同じロイヤルブルーで、けれども、今にも涙がこぼれてしまいそうな、とても悔しそうな顔をしていた。

『弟の、ゼン殿下…?ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。
瀬那 と申します。』

(もう少し手加減して試合を運べばよかったかも)
そう頭をよぎったが、体が動いてしまったものは仕方ない、と割り切って、自己紹介をした。

「いや、かまわないさ。最近、ゼンは私の従者の真似事のようなことをしていてね。私の身近に置く者として瀬那殿を迎え入れる上で手合わせをしたいと申し出があってな。お付き合いいただき感謝する。」

イザナ王子がゼン王子を向き、

「ゼン、お前の負けだ。瀬那殿を私とゼンに仕えるものとして認める。」

そう言うと、ゼン王子が不服そうな表情をぐっとこらえて、私の姿をその瞳に映しながら、消え入りそうな声でよろしく。と会釈をした。
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