第1章 幼き日の出会い
透き通った青色に、うっすらと浮かぶ白い雲の空の下。
クラリネス王国の城内、人目の少ない木陰に一人佇み空を見上げると、木の葉の間からキラキラと光が差し込み眩しさを感じた。
(眩しい・・・・・)
長いブロンドヘアーを一つに束ね、衛兵でも騎士でもない身軽な装備に大きな襟巻を纏った中性的な面立ち。
(清々しいいい天気。今日はいい日になりそうだ。
そういえば、初めてここに来た日もいい天気だったな。)
ーーー幼き日の出会いを思い出す。
10歳の誕生日を迎えた私は父に連れられてウィスタル城内にいた。
――今日からここがおまえが守るべき場所だ。瀬那。
『承知しました、父上様』
ホシミ家、その名前はあまり公にはなっていないが、代々クラリネス王国の王族や王族と信頼関係が築かれている上流貴族に仕え、影ながら―つまり諜報活動や交渉事といった水面下での調整役として―国政を支えてきた旧家のひとつである。
現在のホシミ家当主の統哉(トウヤ)は私の父であるが、聡明快闊な性格で、歴代当主の中でも特に王室からの厚い信頼を寄せられているとの専らの評判であった。
「それではこちらへどうぞ。」
と臣下の方に声をかけられれば、細かな装飾が施された色鮮やかの扉が開く。
促されるままに部屋へ足を進めるとそこには、美しいブロンドヘアーに、まるで全てが吸い込まれそうなほど澄んだロイヤルブルーの瞳の少年が立っていた。
『お初にお目にかかります、イザナ殿下。
本日よりお仕え致します。瀬那・ホシミと申します。』
「ようこそ。なるほど、髪色は僕とよく似ているね。」
『え?』
そう言うと、イザナ王子がこちらへ歩み寄ってきた。
顎に手をかけられた。穴が開くのではないかと思うほどに、よく私の容姿を確認していることがわかる。自分の心拍数が上がっていくのが分かった。
「バイオレットの瞳が美しいな。」
『はぁ』
イザナ王子に向かって出たのは、殿下に対して失礼にあたるのではないかというほどの生返事だった。
彼は、気に入った。と小さな声でつぶやくと、私を見て微笑み、そういうと踵を返して臣下を呼び寄せた。臣下に耳打ちで何か指示を出した様子だった。
そうしてこちらを振り返ると、清々しい笑顔をしていた。
「では、一手手合わせを見せていただきたい。」