第1章 「謎の子供」
1ヶ月後。
だいぶミクリヤの精神状態も落ち着き、怪我もすっかり治った。
エル「元気になったようだな、メフメット」
『うん…ねぇ、エルヴィン』
ミクリヤは急に真剣な顔になった。
エル「なんだ?」
『この世界のこと…教えてほしい。どんな世界なの?窓から見えるあの大きな壁は何?』
ミクリヤは何も知らない。
知りたくなるのも当然か……。
エル「ここは、巨人が支配する世界だ」
『巨人?』
エル「そうだ。その巨人には知性が無く、人間を補食する以外の生態はあまり知られていない。100年前、人類は50mを越える強固な壁を3重に作った。巨人の存在しない安全な領域を確保する為だ」
『そう…なんだ』
ミクリヤは巨人を知らない風だった。
壁の外にいたとき、見たはずだが…。
戦ったあとに気を失い記憶も失ったか。
エル「そういえばメフメット、私はこの度団長に上がったよ」
『団長?昇格したってこと?』
エル「ああ」
私は調査兵団13代団長となった。
そうとなれば、仕事が増える。
『エルヴィン…さん』
なぜか'さん'をつけたミクリヤ。
私が団長に上がったからか?
エル「いいよ、エルヴィンで」
『そ、そう…?じゃあ私のこともミクリヤでいいよ』
エル「ではミクリヤと呼ぼう」
最近、ミクリヤが笑うようになった。
でもそれは、作り笑いだろう…?
エル「少し、外に出てみるか?」
『うん、出てみたい』
エル「ここからだと訓練所が近いが…」
ミクリヤは兵士などに興味はあるのか?
運動神経は良さそうに見えるが。
『うん、行く』
行くのか。