第1章 黒尾夢
それを逃がすまいと、腰と頭を掴まれ、口内に舌が入ってくる。
だんだん、呼吸が苦しくなって、鼻から抜ける息に声が漏れる。
「・・ん・・ふぅ・・・」
『加菜、ヤラシイ』
そう言って唇を離し、私の手を引いて立ち上がらせてから
すぐ後ろにあるベッドに上から覆いかぶさるように押し倒される。
あまりの急な出来事に、頭がついて行かない。
半ばパニックになりながら考えていると
『加菜』
耳元で囁くクロの声。
見上げれば、いつもの口元だけ笑うあの顔で
『このままだとしちまうけど、いいのかよ??』
キスしそうな位の近距離に、クロの顔がある。
この先の展開を考えると、嬉しいのと恥ずかしいのと、どうしたらいいかわからない緊張とで、顔が赤面する。
『嫌なら殴ってでも拒否しな。じゃないと俺、このままだと加菜のこと無理やりでも犯しちまいそうだ』
クロはいつでもそう。
一見無理やりでわがままで強引そうなところもあるけど、本当は優しい。
いつも決定権は委ねてくれる。
あの日
“付き合って” じゃなく “付き合わねぇ?” と
疑問形だったのも
「私はずっとクロが好きだった。今も大好きだから、一緒に・・・したい・・・」
そう言って、触れるだけのキスをした。
『おまっ・・・あんま煽んなって・・・』
珍しく余裕の無い驚いた表情。
『・・・くっそ、どうなっても知らねぇからな』
その言葉が独り言なのかわからないまま、口を塞がれる。
くちゅっ くちゅっ
何度も角度を変えながら、口内を舌で犯される。
『はぁ・・・わりぃ、ちょっと余裕ないわ・・・』
そう言ってネクタイを緩め、ベストとシャツを一気に脱いで行く。
引き締まった身体に筋肉質な腕。
やっぱり背が高いだけじゃないんだなって、改めて思い知らされる。
ズボンのベルトをカチャカチャと外している黒尾と、視線が合った。
うっすらと汗ばんだクロ、やっぱりかっこいい。
そんな気持ちを見透かされるような気がして、ぱっと目を逸らした。
『・・ははーん・・・欲情しちゃった?』
図星だ。
恥ずかしくて顔が熱くなるのがわかる。