第5章 菅原夢
元気が無い、か・・・
元気がないというより、自分の気持ちの整理がついてない
だから、言葉数が減っている、という状況
怒っている訳でも、落ち込んでいる訳でもない
「ちょっと悩み事。よくわからなくてね、自分がどうしたいか」
はぁ、と溜息をついて、ココアをひとくち飲み込む。
糖分がからだに染み渡る。
「まぁ、こればっかりは、自分で解決するしかないからさ」
菅原に相談したところで、何も解決しない
なるべく明るく言葉を返す
『そっか・・・』
「菅原は、悩みとかってある?」
自分自身の答えの出ない悩み事と向き合いたくなくて、何となしに話題を振る
『んー・・・そりゃあるよ?』
「へー、そっか。・・・・悩むのってさ、辛くない・・?」
『うーん、そりゃ辛いよ。・・・でも、辛い思いしてでも、向き合わなきゃいけない時もあるべ』
な?と、困り顔でこちらに視線を向ける。
話してる内容は重たいのに、それを感じさせない彼の表情。
本当の強さって、こういう人の事を言うのかもしれない
何気なく思った
「強いね、菅原は。私で良かったら、いつでも相談に乗るよ?」
『・・・ありがとな』
そういって、お互いに飲物を口に運んで
ふぅ と 一息ついた
『・・・・・・なぁ、鈴木』
「んー?」
目を合わせることなく、返事だけした
『あのさ・・・・俺、鈴木の事が好きなんだ』
いきなり告げられた 告白
一瞬、何が起こったかわからなかった
仲のいい男友達
幼馴染の部活仲間
好き? うん、私も好き
でもそれは、同じ“好き”だろうか
頭の中はいっぱいなのに、言葉としてまとまらないまま、無言になる
唇が言葉を発しようと動く
でも、言葉は出てくることはなくて
「っ・・」
言葉に詰まる
それを見守る様に、ゆっくりと手元の紅茶を飲みながら、無言で待ってくれている
菅原の事だから、本当に真面目な気持ちだろう
真摯な想い
そして、今もこんなに待ってくれている
いっぱいいっぱいになっている、余裕の無い私を、ずっと待ってくれている
急かすわけでもなく、じっと見つめる訳でもなく、ただ傍にいる