第3章 月島夢 前編
そんな日々が数ヶ月続いた。
私は、彼と距離を縮められている実感もあって、次第に彼に惹かれて行った。
いつの間にか、バレー部の練習では無く、月島蛍のバレーの練習姿を見ていた。
時は流れ、2月。
節分も終わり、バレンタインが近付いてきて、何となく教室が浮足立っている。
「私には関係無いなぁ・・・」
独り言が口から漏れた。
好きな人はいるけど、告白したとして付き合える気がまるでしない。
ましてや、同じクラスで嫌われでもしたらどうしようかという不安の方が大きい。
漠然と考えていると、前にいた友人が雑誌を見ながら話しかけてきた。
『加菜〜、バレンタインチョコは手作り派?買う派?』
「ん〜・・・どちらかと言われれば、手作り派かなぁ・・・」
『え?加菜、手作り!?さては、好きな人にあげるつもりだなぁ〜!誰?誰なの〜?』
と詮索して来る。
「いやいや、違うって。買うとなるとセンス問われるし、そんな自信無いし。手作りだったら、愛嬌で何とかなりそうだから」
そういって話を濁す。
バレンタインかぁ。
ここ最近は部活の時は少し話すし、そもそも同じ進学クラスだし、部活の後で食べてっていう感じで、山口君の分と一緒に義理っぽく渡すのだったら、オッケーかな?
いや、でも、『何それ、気持ち悪い』とか言われそうな気もする・・・
う〜ん・・・でも、なんだかんだ言って優しい所もあるから、結局は受け取ってくれたりしないかな?
いつも部活見せてもらってるお礼って事にして・・・
うん、それだったら一応理由になってるし、そんなに不審に思われないかも・・・
と言っても、勝手に一方的に部活見てるだけなんだけど・・・
いやでもやっぱり・・・・
そうやって堂々巡りを繰り返しながら悩んだ結果、手作りを渡すことにした。
でも、さすがにチョコレートは重すぎると思い、手作りクッキーにしようと決めた。