第2章 木兎夢
試合を見に行く度に
『加菜ー!!』
と観客席にいる私に手を振ってくる木兎。
試合が終わると
『加菜ー!今の試合見てくれてた!?俺のスパイク、最強だろ!?』
と、大声で話しかけて来る。
ただでさえ5本の指に入るスパイカーで目立つ存在なのに、私に話しかけることで、周囲の視線が私に集まる。
“妹?”
“いや似てないだろ”
“彼女じゃない?”
そんな話声が聞こえて、何だか恥ずかしくなる。
「観客席にいるときは声掛けないで」
と言ったら、その翌日、しょぼくれモードで使い物にならなかったと、後日赤葦さんから聞いた。
他校の試合を見ている時だって
『何だよ〜!俺以外のヤツの試合なんか見て〜!』
と、あからさまにヤキモチを妬く。
かと思ったら、
『加菜ー!!』
と大声で名前を呼びながら抱きついてくる。
自由奔放で全力投球、猪突猛進で打たれ弱い。
そんな人。
お付き合いも順調だった。
敬語が取れて“加菜”“木兎”そう呼び合う様になった。
そんなある日の放課後、いつもの様にスマホに連絡が来た。
『昼練で足ひねって、今日は自宅で休めって言われたー!』
部活で暴れられなかった事で、体力と不満が有り余っているのが文面からわかる。
しぶしぶ納得した様子が目に浮かぶ。
「大丈夫?しょうがないなぁ、帰りに木兎の家寄ってあげるから!」
そう返信すると、
『ヘイヘイヘーイ!早くカモン!!』
とすぐに返事が来た。
まったく、本当にどっちが年上かわかんないな、もう。
苦笑しながら、スマホをポケットにしまった。
ピンポーン
インターホンを鳴らす。
木兎の家にお邪魔するのは、今回が初めて。
ちょっと緊張しながら、インターホンの返事を待つ。
カチャッと音がして
『今行くー!!』
ドタドタと足音が聞こえて来た。
足ひねってるんだからゆっくり来てよ、と、こちらがハラハラする。
玄関のドアがガチャリと開いた。
『おぉ!加菜ー!!』
そう言って、いきなり抱き付いてくる。
「っちょっと!木兎!ここ玄関!」
慌てて腕を振りほどく。