第2章 夢の終わり
俺の記憶力には限界か見えなかった。
まだ小さい頃、両親も祖父母も俺の頭の良さに喜んだ。
両親は絵本の内容や、簡単な言葉をどんどん覚える息子が可愛くて仕方ない様子だった。
祖父母はどちらも物忘れが多かったので、孫に物を置いた場所や用事を、教えてもらうことが嬉しいようだった。
俺はそんなことの一つ一つが嬉しくて、得意になってどんどん記憶を溜め込んでいった。
そしてそれは、度を越し、常軌を逸するまでになった。親の持つ書籍、参考書などすぐに読み終え、図書館に行きたいと懇願し、ただただ知識を記憶を詰め込み続けた。
小説を読むとそれに感化され、言葉使いが少し変わったり、考え方まで影響される人がいるが、大体は数日後には記憶が薄れて元に戻る。正確には新たに得た知識などによって、少しばかり豊かにもなるだろう。
だが、俺の場合は違った。人格形成の段階で膨大な知識、情報、見聞、思考に影響され、飲み込まれ、子供らしからぬ子供になっていた。善悪の判断は六法全書に委ね、哲学的な考えを持つ一方で科学的に物事を解釈しようとする。
そしてパラドックスに陥るのだ。
相容れない思想や理論を同時に理解する。プログラムで言えばループ関数を無限に繰り返すような状態だ。当然CPUはフリーズし、エラー警告があがる。
だが強制終了もできない。ただただ矛盾の中を何度も行き来し、どちらも答えにできないと理解しても、論争が繰り返される。
記憶力が良いのではなく、記憶を消す能力がない。
そんな皮肉を両親に言われたとき、失うことを知らない俺の中で完全に何かが消えてしまった。
そんな話を彼女に話した。
そして彼女はそれを、黙って静かに聞いてくれた。