第1章 「 先輩 」 菅原孝支
それからつまみ注文して
たくさん飲んで
1時間ほど経った頃
俺は本題を切りだした。
「で、今回はどうしたんですか?」
「え~?聞くの~?」
「そのために、俺のこと呼んだんでしょう?」
その一言でさっきまでの笑顔が嘘のように
泣き始める先輩。
「彼氏と別れたのー!!!」
でしょうね。
先輩が「ふたりで」会おうと言う時にはいつもこれ。
これ意外の理由はない。
高校時代、彼氏にフラれ、部室で号泣する先輩を慰めた日から
彼氏と別れるたびに俺を呼んでは、話を聞かされる。
好きな人が恋人と別れた。
なんて話。俺にとっては吉報でしかないから、まあ、ちょっと嬉しかったりするんだけど。
「ひどいんだよ!!ひどいんだよー!浮気してたの!最低!!」
「そうなんですか。」
「彼、ひとり暮らししててさ、しばらく仕事が忙しいから会えないって言われて、1カ月ぶりに彼の家に行ったらね!ゴミ箱から使用済みの物が出てきたの!!」
多分この話の流れ的には使用済みのコンドームかな…。
「私、1カ月も家に行ってないのに、なんで?!ってなって、問い詰めたんだけどね、
酔った勢いで飲み会にいた女の子家に上げてそのままって言うから!もう!信じられない!無理!」
そう言いながら泣き続ける先輩。
まあ、確かに悲惨ですよね、それは…。